桜の木の下で-約束編ー




どうして?






何故、和鬼はそんなに
穏やかな笑みを浮かべられるの?





『さて……。

 咲、汝を再び問うことにしよう。

 和鬼を守りたいと我らに告げし言の葉は
 今も変わりはないか』




そんなの今更確認されるまでもない。




私は本当の意味で、
和鬼を守りたいの。




和鬼が穏やかに
暮らせる場所を
見つけてあげたい。





一緒に暮らせるのに
越したことはない。






だけど……私の傍に居ることが
和鬼にとって苦しいなら、
近くじゃなくていい。





『和鬼が私を忘れてしまっても、
 和鬼の魂を守ることが出来るなら、
 私はそれでも構わない。

 あの時、咲鬼が和鬼にそれを
 託したように……。

 巡り巡ってそう言うものは、
 訪れるの。

 だから……神様、力を貸して。

 国王も桜鬼神も……
 和鬼が一人で背負い続けたものは、
 私が受け継いで見せるから。

 鬼の民じゃない私が、
国王になるなんて、
 許されないかもしれない。

 だったら……
 咲鬼姫として生きてもいい。

 咲と咲鬼姫として……
 生き続けることが、
 この世界の為の、白い嘘になるなら
 私はそれでも構わない』




再び目を閉ざした和鬼を
抱きしめながら、
神々に縋るように叫んだ。





だから助けたい。




私の手に掬えるのは、
僅かだとは知っているけど
この地を守りたい。



和鬼を守りたい。





そして……私自身も守りたいから。

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