桜の木の下で-約束編ー
強く願い続けた私の胸元から
まばゆい光が輝き始める。
勾玉は輝きと共に姿をかえて
剣となって光を放つ。
その剣は和鬼が扱う
鬼狩の剣によく似て非なるもの。
『咲、汝が願いは聞き届けられた。
新たな国王の誕生に、
我らより祝福の加護を』
その言葉と共に、
一斉に神々の指先から放たれたものは、
闇を切り裂く雷光。
雷光は和鬼の体へと
吸い込まれていく。
次に迸るものは朱い炎。
焔は和鬼を優しく包み込むように
闇の呪縛を解き放っていく。
最後に訪れる者は、
乾いた心を満たすように
降り注げられる
やわらかな慈しみの雨。
降り注ぐ雨に抱かれるように、
和鬼の体は、
ゆっくりと
空へと浮き上がっていく。
三つの神の力に抱かれた
和鬼に向かって、王の証たる剣を
天に翳してその言葉を解き放つ。
『国王たる咲が命ずる。
桜鬼神・和鬼。
汝が魂を解放する』
桜舞い散るあの場所で
再び……逢えるその日まで。
神様に抱かれるように、
和鬼は桜吹雪に抱かれながら
この世界からその姿を消した。
それと同時に、
龍神たちの姿も消えていく。
和鬼が消えた、空を見上げながら
私は一人、息を吐き出した。