桜の木の下で-約束編ー
「……そうか……」
「ねぇ、貴方の名は?
今ならわかる。
金色の鳥は、貴方でしょ?」
「神威。
この世界の全ての宝【ほう】を抱くもの」
「神威?」
私が名前を繰り返したとき、
社の奥から、
次々とあの不思議な空間の中で出逢った人たちが姿を見せる。
「神威、あの人たちは?
あの龍神たちと同じ色がする」
「左側から俺と同じ、雷龍に連なる飛翔【ひしょう】。
その隣は、炎龍に連なる、火綾の巫女・桜瑛【さえ】。
最後は、蒼龍に連なる、柊佳【とうか】」
「有難う」
私はその人たちに、
ゆっくりとお辞儀をした。
「ご当主、飛翔、参りましょうか。
神前に連絡を付けております」
恭しく頭を下げて、
迎え入れる黒髪の女性。
「華月、心配するな。
俺も何度も振り回されない。
それに医者なら、そこに居るだろう。
咲、お前にその世界託した。
飛翔、行くぞ」
少年がそう言うと、
その傍に控えていた青年や婦人。
そして少年と同世代の女の子たちが、
お辞儀をして私たちに背を向けていく。
彼らが乗り込んだ車は、
ゆっくりと神社から立ち去っていく。
「咲」
来客たちが帰った後、
私の名を呼んだのはお母さん。