桜の木の下で-約束編ー




『汝が国主。
 咲が命ずる。

 和鬼、かのものを再び
 桜鬼神とする。

 我を助け常に隣に立ち
 人の世と、
 鬼の世の架け橋とならんことを』









心の琴線に触れるように流れ込んできた
その言葉をゆっくりと抱きしめた時、
ボクの中で、熱い想いが込み上げて
それはやがて……一振りの刀を形どる。




時は刻み始める。




再び……この桜舞い散る思い出の地で。







サビが終わり、転調をする間際、
ゆっくりと手を伸ばしたボクの咲には
桜の枝から舞い降りた咲。






羽衣を纏って微笑み続ける
咲をボクを後ろから抱きしめながら、
最後のフレーズを紡ぎだす。









最後……咲が静かに流した涙は
一珠の宝石となって、
地面に転がった。







桜の花弁の絨毯に
転がる涙石(るいせき)。




カメラは宝玉を捕えて、
撮影は終了した。






「お疲れ様でした」




スタッフの挨拶を終えて、
ボクは咲を皆に紹介する。





「ご心配おかけしました。
 皆さんと仕事が出来てよかった。

 皆さんが支えてくれたから、 
 この場所に来て、ボクは記憶を取り戻せました。

 紹介します。

 譲原咲。

 ボクが焦がれ続ける
 最愛の人です」




何時の世も、
ボクは彼女にこの思いを伝えるため
届けるために歌い続ける。




そして……それは、
これからも変わらない。



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