桜の木の下で-約束編ー




駅から電車で通学しようと思うと、
逆側の坂を延々と下って最寄駅へ。


学校まで、
最寄駅から二駅。



そしてもう一つの徒歩は、
逆側の斜面の山道を延々に下っていく。


そうやって下って辿り着く場所は、
学校前のコンビニの裏山。



最寄駅から電車で行く方が、
回り道になってしまう私は、
運動がてら、
いつも山越えで徒歩通学を強行する。




枝を避けながら、
獣道のような細い道を駆け降りて、
ようやく見えた下界。



コンビニの裏で、
スカートを払い、
靴下を新しいものと履き替えて、
長い黒髪を軽くブラッシング。



制服のリボンの角度を調整すると、
所定の位置に鞄を固定して、
おしとやかに学院の門の方へと歩いていく。



さすがお嬢様学校というべきか、
運転手に車で送迎っていう生徒が多い中、
一部の生徒は、自分で通学してる。


私の場合も、数少ない自力通学生徒組になるんだけど
こうやって山越えで
通学してるとは親友以外は知らないはず。



「ごきげんよう。
 咲さま」

「ごきげんよう。
 奈津子【なつこ】さま」




校門の前、擦れ違うクラスメイトと
挨拶を交わしながら
親友の司【つかさ】を門の前で待つ。


ゆっくりと大きな真っ黒の車が
校門前のロータリーへと滑り込んできて
運転手がすかさず降りて後部座席を開けると
司と、その姉である高校三年生の一花【いちか】先輩が
ゆっくりと姿を見せる。


「あっ、おはよう。
 司」


門の前、姿を見せた司に向かって
いつものように声をあげて、
手を振る私に、
背後からシスターの咳払いが聞こえる。


あっ、
やっちゃった。


「ごきげんよう、
 シスター」


司は、何事もなかったように
姉である一花さまと共に
シスターに朝の挨拶をして
門の中へと入っていく。

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