桜の木の下で-約束編ー
YUKIのPVらしき映像が流れてた。
「咲、どうかした?」
「あっ、司」
「あぁ、YUKIねぇー。
一花も、この店来ると此処から動かなくなるんだよね。
家にPVあるのに、いつも固まるんだよね。
私にしてみれば、Ishimaelも流して欲しいところなんだけど
今度、店長に頼んでみようかな。
ここの店長って、お祖父様の知り合いなんだよね」
えっ?
司、今なんて言った?
家にもPVあるって言った……。
家でも見れるの?
「ねぇ、司。
どれ?
私、そのPV連れて帰る」
慌てて鞄の中から財布を取り出す。
お祖父ちゃんから六月に入ったばかりの今日は、
お小遣いを貰ったばかりで5000円は入ってる。
それに毎月、貯金することの方が多いから、
通帳にはそれなりに諭吉さんが居たはず。
「これで足りる?」
そうやって財布から出した
五千円札を見た司はため息をついた。
「こりゃ、よっぽど重症だわ。
でも咲にも夢中になれるもの出来たんだ。
そう思ったら私も嬉しいわ」
そう言うと司は、私の手を引いて
新譜売場へと連れて行く。
似たようなCDが三枚。
「これがYUKIのCD。
新曲のね。
Aタイプが、1曲目・2曲目が共通。
3曲目が、1曲目のinstで、
それプラスLIVE DVDが10分間。
Bタイプが、一曲目・2曲目は同じ。
3曲目は、2曲目のinstで、
それプラス、一曲目のPV。
Cタイプが、一曲目・2曲目が同じ。
3曲目は、Cタイプのみに収録された曲。
それプラス、DVDにはYUKIのジャケット撮影の模様と
LIVEの楽屋裏の様子が収録されてる。
さっ、どれにする?
ちなみに一花は、全部買ってた」
司は私にもわかりやすいように、
新譜コーナーの前で、
YUKIの新曲CDのそれぞれの特徴を教えてくれた。
そんなやりとりをしている間にも、
新譜コーナーにはいろんな人が集まって来ては
お目当てのCDを手にして消えていく。
一枚ずつ少なくなっていくCDに焦りを感じる私。