桜の木の下で-約束編ー
「これは?」
「父にチケットを頂いたの。
私、一人で行くには寂しくて。
もし宜しければ、
咲、一緒に出掛けませんこと?」
司情報では、確か依子先輩のお父様は
芸能プロダクションを経営してるはず……。
手を伸ばして真っ白い封筒を受け取ると、
その中から、チケットを取り出す。
チケットに刻まれた文字は
-YUKI-。
……YUKI……
その名前は私にとって、
大切な何かと繋がっている。
何故かそんな気がした。
何に対して懐かしいか、今はわからない。
考えようとしても頭の中が霞みがかって
何も思いつかない。
「……咲……」
依子先輩が心配そうに私を覗き込む。
依子先輩と共に出掛けたら、
YUKIに逢うことが出来たら
何かわかるかも知れない。
部活を休んだあの頭が痺れるように重かった朝に
御神木が見せたビジョン。
「先輩、行きたいです。
私で良かったらお供させてください」
満面の笑みで伝える。
あの夢も気になる。
夢も気になるけど、
依子先輩と一緒に外出出来るのも楽しみ。
そして再びチケットへと視線を移す。
YUKI
-四季の木漏れ日 現世の夢-
公演日:20●●.6.15
開場:17:00
開演:18:00
「ふえぇぇぇ」
私の声が校内に響く。
慌てて依子先輩が私の方へと歩み寄る。
「咲、どうかして?」
「よっ、依子先輩。
すいません、公演日今日なんですか?
私、この開場時間部活終わってません。
祖父も厳しいし、行きたいけど……」
脳内パニック。
依子先輩からのお誘い。
突然のお出かけ日が、
何の準備も出来ない……今日……。
私は特待生で部活を休めない
部活が終わるのが十八時。