桜の木の下で-約束編ー
「有香さん、お邪魔してます」
「依子さまもどうぞ、お席の方へ。
中山、依子さまとお友達をお席へご案内して。
YUKI、時間よ」
その女性はゆっくりと告げると、
YUKIと共に何処かへ消えていく。
私も依子先輩と共に、
スタッフの中山さんに連れられて関係者席の
センターアリーナ前列の方に連れて行かれる。
一般のファンと隔離された
その場所……センターアリーナーの一角は
ちょっとしたお茶会スペースになっていた。
飲み物がテーブルに置かれ
ファンの視線が突き刺さる。
やがて……場内アナウンスが流れ
会場の灯りが落とされた。
湧き上がる歓声。
真っ暗な会場に鳴り響く
鼓の音色。
重なる琵琶。
……お琴の調べ……
私はYUKIの生み出す
その現世の夢の中に……溺れていった……。