桜の木の下で-約束編ー
「失礼致しました。
シスター、以後気を付けます」
口早に告げると
逃げるように司の後を追って
校舎の中へと入る。
司の肩にようやく追いついた時、
親友の無情な一言。
「おはよう、咲。
ったく、アンタ朝から何してるのよ。
シスターの前で乱れた言葉使って
どうするの?
『譲原さん、大和撫子らしく美しくですよ』」
なんて、いつもの調子で、
ひそひそと声を紡いだ後の極めつけは
シスターの声真似。
なんで司は……
シスターのお小言を食らわないかなー?
シスターの知らないところでなら、
司のほうが結構、
大和撫子らしくない行動してると思うんだけど。
なんて思いつつも、
素直に謝罪する。
「ごめん。
随分とマシにはなったと思うんだけどね。
慣れたつもりでも、まだまだだね」
段々小さくなっていく声に、
一花先輩が立ち止まって
にっこりと微笑みかける。
「咲、可愛いvv」
スキンシップが激しい、
一花先輩に、ギューっと抱きつかれて
身動きがとれない私。
「ねぇ、司。
この一花先輩の濃いすぎるスキンシップ。
これはいいわけ?」
「あぁ、一花の場合は
言っても無駄だから」
そんな無情な一言で、
バッサリと終わった。
「さて、それではまた後で。
ごきげんよう」
司の一言で、それぞれの朝練の場所へと別れる
分岐点についたことを知る。
「ごきげんよう、咲」
「ごきげんよう。
練習、頑張ってくださいね」
マーチングバンド部の主将を務める
一花先輩を見送り、サッカー部の期待の星、司を見送って
私もテニス部の練習場所へと向かった。
制服から、部活用の練習体操服に袖を通して
二年生、三年生の先輩たちが練習している
テニスコートへと近づくと、球拾いをやりつつ
素振りや、壁打ちで自分の練習をこなしていく。