桜の木の下で-約束編ー
ボクはYUKIの仕草で
伏せ目がちに笑う。
そして視線を咲へと移した。
咲は……静かに涙を流して
まっすぐにステージを見つめていた。
「今日、最後の曲です。
『邂逅【かいこう】』」
勢いに任せて、
ボクは演奏曲目を変更する。
幸い次の演奏は
ボクの独奏だから。
遠い古から伝わり続ける鬼の調べ。
……何故……
ボクは……
ボク自身と相反することをしてしまうの?
……いや……、
ボクが……ボクとして……
彼女を求めてしまっているから。
そう……ボクが彼女を求めてやまない。
彼女から奪った記憶を彼女に……。
この調べに乗せて……。
……咲が……
こんなにも愛おしい。
【邂逅】を琴の音で歌い上げた後
ボクは頬を伝う涙を感じた。
……咲の為になら……
ボクは再び……涙を流すことが出来るんだね。
涙なんて……
当の昔に忘れてしまったと思ってた。