桜の木の下で-約束編ー
やがてチャイムの音が校内に響き、
私たち部員は朝練を終えて、
練習着から制服へと着替え
それぞれの教室へと向かった。
教室に辿り着いた頃には、
サッカー部の朝練を終えた司が
座席に座りながら、私に手を振った。
その五分後には、
朝のホームルーム、朝のお祈り。
そして一時間目の授業が続いていく。
私、譲原咲
-ゆずりはら さき-。
世間でいう超お嬢様学校
聖フローシア学院 高等部一年生 スポーツ特待生。
中学までは中学までは
普通の公立に通ってワイワイガヤガヤしていた私が
飛び込んだ未知の空間は女子校。
お祖父ちゃんに学費の負担をかけたくなくて
中学の担任と必死に考えて辿り着いた進学先が、
『スポーツ特待生は学費免除』を謳い文句にしていた
この学校だった。
運動神経にだけは自身があったし、
中学の部活動でも、好成績をテニス部で残していたから
部活ということで行けば、問題はなし。
まぁ、学業っていう面ではなかなか危なかったところもあるんだけど、
それでも中学の担任や、親友の司、そして一花先輩のおかげで
合格ラインを越えて、入学が許された。
入学早々から
『ごきげんよう』
『ごきげんよう』っと
にっこりと微笑んで交わされる、
この学院独特の挨拶にドン引きして
顔が引きつったのは言うまでもない。
そして対面する相手の名前を
優雅に【さま】付で呼び合う習慣。
呼びなれた司ですら、
学院のシスターの前では『司さま』って、
にっこり微笑みながら名を紡ぐ。
考えた当初は寒気が……。
だけど……私には、
この道しか選択肢はないんだ。
入学できたからには、
スポーツ特待生として成績を残して
三年間、学費免除の恩恵に縋って
無事に卒業すると、強く心に決めた。
それが……お祖父ちゃんと二人暮らしの私が
乗り越えないといけない道だから。
私が幼稚園の時に離婚した両親。
原因なんて小さすぎてわからなかったけど、
気が付いたら、
お父さんもお母さんもいつも喧嘩してた。
お母さんはお父さんの
浮気が原因だって言ったし、
お父さんもお母さんの
浮気が原因だって言ってた。