桜の木の下で-約束編ー


朝練・授業・放課後練習・龍王寺さんのスクールでの練習。


一日のスケジュールを終えるのが夜の九時。

その後、電車を乗り継いだり、司と一花先輩に拾って貰って
自宅に帰る日々が続いた。



やがて一学期の期末試験が終わり、
私たち生徒は、夏休みへと入った。




七月末、順調に地区大会の予選を勝ち上がっていた
テニス部が県大会で敗退した。


三年生の引退が決まったものの、
私の境遇は変わることはなかった。



今も依子先輩の権力は
続いているみたいだった。


その日の練習でも私は筋力トレーニングばかりで、
球を触らせて貰えなかった。


五キロのマラソンの後は、
十種類の筋力トレーニングメニューを延々と
隅っこでこなし続ける。


溢れ出る汗を必死に手で拭いながら、
朝の部活が終わるまで、練習を続けた。


十二時。


「全部員、一時間休憩に入りなさい。
 お疲れ様、差し入れを持ってきてよ」


引退したはずの依子先輩が姿を見せて、
告げると、次々と部員たちからは感謝の声があがっていく。

解散の号令と共に、散り散りになった部員たちは
それぞれのグループに分かれて移動していく。


今も依子先輩が睨みをきかす部活内、
私に声をかけるものは一人もいない。


一人、中庭の水場まで歩いていく。



「暑ーっ」



暑さが苦手な私は水道水の蛇口をひねって
愛用のタオルにたっぷりの水を含ませ、
それを軽く絞ると肩からタオルをひっかけた。


冷たかったタオルは熱をすって、
瞬時にぬるくなる。




「咲、ここいい?」



突然、背後から声をかけるのは親友の司。

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