桜の木の下で-約束編ー
どっちにしても、
変わらないのは、両親が離婚したと言う事実。
両親の離婚後は、
お母さんに引き取られて
その日からお父さんに会うことはなくなった。
それでも小学校5年生までは幸せだった。
そりゃ、仕事が忙しくて一人の時間が多かったし
欲しいものも、なかなか買って貰えないって言う
寂しさはあったけど……私にはまだお母さんが居てくれるって
思えたから。
そんな温もりすら失ったのは
小学校五年生の夏。
母と二人で住んでいた
その家を出て私はお祖父ちゃんが住む
この町に引っ越ししてきた。
そして辿り着いた
お祖父ちゃんの家で私は捨てられた。
*
『咲ちゃん、お話があるの。
咲ちゃんに
とっても大切なお話よ……。
ママ再婚することに決めたわ。
ママ、新しいパパと幸せになるから、
咲ちゃんは、
お祖父ちゃんと暮らしてね』』
*
お母さんは……ゆっくりと、顔に笑みを浮かべながら
残酷な言葉を続けた。
その日を最後に、お母さんとも
会うことがなくなって、
お祖父ちゃんと二人だけの生活が始まった。
住み慣れた一菊(いちぎく)を
離れて電車で二時間。
お祖父ちゃんと住む
この町は、塚本(つかもと)と言う場所が
私の居場所になった。
親友の司とは、
この塚本に来てからの付き合い。
公立の小学校に、
五年生の二学期から転校した私に
司は、とても優しかった。
塚本で昔から続く、
老舗デパートの会長の孫。
それが司こと、
射辺司(いのべ つかさ)。
そして司を通して、
別の学校にずっと聖フローシアに通い続けていた
一花先輩とも親しくなった。