桜の木の下で-約束編ー


ベランダから咲を部屋へと送り届けて
ボクはまた自分の住処へと帰った。


そのまま鬼としての務めを明け方までこなして、
起床時間前に、闇に紛れてホテルへと戻った。



「おはよう、YUKI」

「おはよう、有香さん」

「ごめんなさい。
 私ってば、貴方より起きるのが遅かったなんて」

「疲れてるんじゃない?」

「有難う、YUKI。
 でも大丈夫よ、私は貴方を守る役目があるもの。

 今日はツアーの方は中日で移動だけで、
 次の会場に移動した後、
 ホテルに入ってその後はCDショップでのサイン会。

 後は、新作のジャケットの撮影と
 最後がテレビの収録ね」




いつもの様に今日のスケジュールを聞くと、
スタッフと一緒に朝食を終えて、次の会場へとバスとトラックで移動していく。

YUKIのLIVEの宣伝をプリントした
トラックと共に、移動していくスタッフ車両。


高速道路を飛ばして、五時間後に目的の場所へと辿り着いた。
機材車両はそのまま、明日のLIVE会場へと向かい、
ボクは今日のホテルへとチェックインを済ませる。


ホテルで軽く昼食を取った後は、
CDショップでのサイン会を終えて、
次のジャケット撮影に向かう。
 


そして今日最後の現場になる、
テレビ局は、咲が住む塚本。


いつものように守衛に挨拶をして、
地下駐車場から建物の中に入ると、
新曲の披露を兼ねたステージが用意されていた。



新曲には……
ボクの決意が塗りこめられてる。




咲に出会うまで、ボクはこの仮初にすがって
歩き続けてきた。



この仮初こそが、
ただ一つの光のように感じた。



咲と出逢った今、ボクが心から守りたいものは
ただ一つ。



「YUKI、お疲れ様。

 新曲の【傀儡幻想-かいらいイリュージョン-】
 斬新な視点と設定を切り口に完成しそうだね」

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