桜の木の下で-約束編ー







『あらっ、貴女。 
 
 依子さまが言ってたYUKIの悪い虫ね。

 YUKI様がお優しいからって
 調子にのっていらっしゃるのはどうなの?』




咲を苦しめる存在。


あの者は……確か、
依子の手足となって動く三浦。


その三浦の傍に依子が乗る車が止まって
我が物顔で車から降りる。


依子の顔を見た途端に、
咲の表情は曇っていく。



『おはようございます。
 依子さま。

 今日もYUKIにお伝えください。

 私たち、ファン一同礼儀正しく
 YUKIを見送らせて頂きます』

『そう、三浦さま皆様方。

 YUKIも喜ぶと思いますわ。

 皆様のお力で、YUKIはトップアーティストとして
 走り続けることが出来るのですもの。

 引き続き、YUKIをご贔屓に……。

 いつか、YUKIとのファンミーティングを
 セッティング致しますわ。

 その日をお楽しみになさって』



得意げにボクの心を知るはずもなく
勝手に繰り広げられる会話。


依子はファンの視線を集中して受けながら、
堂々とボクがいるこの建物に入ってくる。


依子が去った後も、
三浦たちの咲に対する嫌がらせは続く。


『YUKIには、依子さまがいらっしゃるのよ。
 
 あの方ならば、私たちもYUKIの恋人として
 認めざるを得ないけど貴方は論外なの。
 
 目障りなのがわからないの?

 YUKIも迷惑してるのよ』



次の瞬間、三浦の取り巻きは
飲みさしのペットボトルの中身を
咲の服や髪に向かってぶちまけた。

オレンジジュースが
咲の服に染みを作り咲の毛先からは滴が零れる。

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