桜の木の下で-約束編ー




全てのビジョンを見終えると、
再び硝子窓に手を翳す。

瞬時にして、ただの硝子に戻ったのを確認した後は
ボクの中に流れる鬼の血と向き合っていく。

掌から桜の花弁を生み出して、
咲の周囲を纏わせる。



「桜鬼降臨」



咲の口が小さくそう紡いだ途端、
ボクの全身の血が勢いよく滾【たぎ】っていく。



ボクの魂へと刻み込まれる名前。









……桜鬼(おうき)……。





正確には……

桜 鬼神(おう きしん)

 


ボクの持つ、鬼の世界の役職名。 



略して桜鬼-おうき-






この名を呼ぶものは、鬼の関係者。

そして血の契約を交わした存在。




その名を呼べるものは、
今は咲……ただ一人。




君たちはボクの咲を……。



咲の元へ向かおうと立ち上がった時、
首謀者がボクの前に姿を見せる。




「YUKI、ごきげんよう。

 私、貴方にお願いがあるの……」

「依子さん、君の思い通りにはならないよ」


 
ボクの方に真っ直ぐに歩いてくる
依子さんを読心して先に言葉で封じると
慌てて……入口の方へと向かう。



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