桜の木の下で-約束編ー
*
全てのビジョンを見終えると、
再び硝子窓に手を翳す。
瞬時にして、ただの硝子に戻ったのを確認した後は
ボクの中に流れる鬼の血と向き合っていく。
掌から桜の花弁を生み出して、
咲の周囲を纏わせる。
「桜鬼降臨」
咲の口が小さくそう紡いだ途端、
ボクの全身の血が勢いよく滾【たぎ】っていく。
ボクの魂へと刻み込まれる名前。
……桜鬼(おうき)……。
正確には……
桜 鬼神(おう きしん)
ボクの持つ、鬼の世界の役職名。
略して桜鬼-おうき-
この名を呼ぶものは、鬼の関係者。
そして血の契約を交わした存在。
その名を呼べるものは、
今は咲……ただ一人。
君たちはボクの咲を……。
咲の元へ向かおうと立ち上がった時、
首謀者がボクの前に姿を見せる。
「YUKI、ごきげんよう。
私、貴方にお願いがあるの……」
「依子さん、君の思い通りにはならないよ」
ボクの方に真っ直ぐに歩いてくる
依子さんを読心して先に言葉で封じると
慌てて……入口の方へと向かう。