桜の木の下で-約束編ー



……咲……。








玄関前……ボクは……
鬼としての凍りつくような
眼光と共にガラス扉を潜る。






『君たち咲に何をしてるの』




鬼としての言葉で
魂に刻み込んでいく。




『咲に手を出すことはボクが許さない』






足元から凍り【こおり】つかせるように
気を高めていく。




咲を取り囲んでいた者たちは
ボクが送り出したビジョンで空間を隔離して
魂から凍りついてしまう。







『君たちは、それだけのことをしたんだよ。

 君たちの一人が居なくなったとて
 世界は何も変わらないよ。

 責めるなら自分自身を責めるんだよ』





最後に力を加えようとした時
ボクの手に暖かい温もりが伝わってきた。





その温もりがする方に、視線を向けると
咲がボクの手をギューっと握りしめていた。







「……和鬼……有難う……。

 もういいから……。
 そんなに悲しまないで……」





咲は小さく確実に届く声でボクに紡ぎだした。









『……和鬼……有難う……。

 もう……いいから……
 そんなに悲しまないで……』






遠いボクの琴線にその言葉が触れる。





……咲鬼……






「……咲……」


「和鬼……私は大丈夫。
 
だから……これ以上悲しまないで」




咲の柔らかな声にボクの
凍てついた心は、ゆっくりと溶け出していく。





空間の隔離を解くと
止まっていた現実の時間が動き始める。


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