桜の木の下で-約束編ー
司が公立の小学校を選択していなかったら、
繋がらなかった縁【えにし】。
神様は……嫌なことも沢山するけど、
それでも……司って言う大切な友達は
私に出逢わせてくれた。
机に肘をついて、
ペンを指先でクルクルとまわしながら
ホワイトボードと、
教科書を視線で追いかける。
再び時を告げる
チャイムが鳴り響く。
「はいっ。
今日の授業はこれまでにします」
「有難うございました」
「ごきげんよう」
「ごきげんよう」
シスターの言葉に、生徒全員が立つと、
ゆっくりと一礼する。
授業と休憩を繰り返し
一日の授業が終わった放課後。
教室の掃除当番表を見て、
名前が入っていないことを確認すると
特待生の務めを果たすべく、
朝練をしたテニスコートへと
練習着に着替えて向かう。
私の入部したテニスの練習は、
学院外の、5キロのランニングから始まる。
・ランニング
・素振り
・先輩のコートの球拾い
・筋肉トレーニング
・乱打練習
入部したばかりの一年生は、
試合形式の練習をさせて貰えない。
だけど大会に出て成績を残さないと
学費免除が危うい特待生には、
どんな練習でも真面目にする必要があるわけで……。
必死に汗を流しながら過ごした放課後。
夕暮れ時の校舎に、
部活終了を告げるチャイムが鳴り響く。
「テニス部、練習終了。
Aコートに整列してください」
テニス部のキャプテンを務める
三年生の依子【よりこ】先輩がB・C・Dコートの
一年生・二年生にむけて号令をかける。
慌てて三年生のAコートへと向かうと、
端と端で対面するようにコート周辺を部員が囲んだ。
「明日も朝練あります。
夏の大会に向けて、最終調整に入る時期です。
選抜メンバーの選出も間近ですので、
皆さん、体調管理に気を付けながら練習に励んでください。
今大会は、スポーツ特待生の一年生。
譲原咲を、私のパートナーとして起用します。
咲、ダブルス一緒に頑張りましょう」
突然の発表に驚きを隠せない私。
突き刺さる、
二年生・一年生の視線。
「有難うございます。
依子先輩のパートナーとして恥じぬように
精進したいと思います」
そう言って私は深く一礼すると、
今日の練習は、礼をもって終了した。
かなり疲労が蓄積されてるのを感じる体。
後片付けとコート整備を終えて
更衣室に戻り、着替えを済ませると
同じく部活が終わった司と合流した。
「お疲れ、司」
「お疲れ、咲。
今日、先輩たちと
寿々<すず>高のサッカー部と練習試合したけど、
惨敗しちゃった。
中学生時代に、咲が何度も助っ人してくれて
サッカーの試合も勝ってるの見てたみたいで
うちの先輩たち、
咲に入部して欲しいって言ってたよ」