桜の木の下で-約束編ー
和鬼と出逢って八ヶ月。
和鬼は私の隣で微笑んでくれるけど、
やっぱりその笑みは真実の笑みではないようにも思えて。
私の中に強く残るのは、
物悲しそうに憂いを見せる和鬼ばかりで。
和鬼……和鬼、和鬼。
和鬼を思い浮かべるだけで、
今の私は、こんなにも嬉しくて満たされる。
充実してる毎日。
私の知らない世界を沢山教えてくれる和鬼。
恋なんて私には
無意味なものだって思ってた。
お父さんもお母さんも最初は恋愛して
駆け落ち同然で結婚して私を生んだのに、
すぐに離婚してる。
恋をしても人は簡単に別れることが出来る。
そうやって悲しみに誰かを苦しめるだけの恋なら
最初からしない方がいいって恋を敬遠してた。
私みたいな、悲しみを抱く存在を増やさないために。
そんな私の殻を突き破って、和鬼は恋を教えてくれた。
塗り替えてくれた。
恋がくれる副産物。
沢山の感動。
ドキドキ。
ワクワク。
ハラハラ。
キュンキュン。
正直、知らなくてもいいって
私には必要のないものだって
自分に言い聞かせて閉ざしてた未知の世界。
『恋をして心がどうかなりそうだよ』
今までの私は、そんな言葉軽く聞き流してた。
恋愛相談を持ちかけられても
適当に返事して深く考えてなかった。
だけど今は、バカにしてた気持ちに
私自身が振り回されてる。
振り回されてて、苛立つはずなのに
何故か嬉しくて。
そんな自分に戸惑う部分もあるけど、
やっぱり新しい自分に次から次へときずかせてくれる
和鬼の存在は、日に日に大きく膨らんでる。
なのに私は和鬼のことを殆どしらない。