桜の木の下で-約束編ー
昨日は、あの夢を見なかったからか
はたまた、一花先輩の晩御飯が効いたのか
翌日に残る怠さは消えていた。
三学期が始まった後も、
何時もと変わらない学校生活が繰り返されていく。
朝練後の授業。
ボーっと過ごせるその時間は、
考えるのは和鬼絡みの不安ばかり。
一人で考えられる時間になると、
私の意識は、常に和鬼を思い描いてる。
無意識にノートに増えていく
和鬼の名前。
いつの間にか午前の授業は終わり、
昼休み。
「恋する咲ちゃん。
まぁた、和鬼君の名前を
そんなにノートに書きこんじゃって」
そうやって姿を見せた司。
「……もう終わってたんだ。
授業」
「おいおいっ、恋する咲ちゃん。
重症だねー。
一花に聞いた。
今、和鬼君全国ツアーなんだって?」
司の言葉にコクリと頷く。
「今日の昼休み、一花とカフェテラスで
待ち合わせなんだ。
ほらっ、咲も準備する」
司はそう言うと、
私の鞄の中からお弁当を抜きとると
手を繋いで、テラスまで走っていく。
「一花、ごめん。
遅くなった」
司の声がテラスに轟くと、
一斉に視線が集中する。
「一花さま、ごきげんよう。
お隣、宜しくて?」
次々と掛けられる声に一花先輩は
にこやかに対応しながら
私と司にもそれぞれに席を指定した。
テーブルの向かい側に行くように促すと、
私には隣の席を支持する。
近づいた私に今日も強烈なスキンシップの日課が
襲い掛かったのは言うまでもない。