桜の木の下で-約束編ー



気力を吸い取られて、
へにゃへにゃになった私は
力なく一花先輩の隣に着席した。



昼食に箸を進めながら、
ゆっくりと取り出したのは
YUKI絡みの写真ばかり。


YUKIのLIVE会場の写真や、
LIVEのグッズ売り場などの風景を
納めた写真と共に綴られた文字。




「咲、貴女も見るかと思って
 持ってきたのよ。

 私のYUKI仲間のレポートよ」


そうやって悪戯な笑みを浮かべると、
そのレポートたちを私の方に並べていく。




福岡会場。
神戸会場。
広島会場。




それぞれに会場ごとの、
会場の様子が納められた写真とセットリスト。


YUKIのMC内容がまとめられているのを
追いかけながら、私の知らない和鬼の時間を
共有できた気がして心が仄かに温もりで満たされる。




「いかが?

 私のYUKI仲間も素敵でしょ」



一花先輩にお礼を言いながら、
堪能したLIVEレポート。



「ねぇ、咲。

 最近、和鬼君とは?」


YUKIではなく、あくまで和鬼くんと
言う呼び方で問う一花先輩。



「三週間逢えてないかな。

 一度、和鬼が帰ってきてたみたいで
 枕元に桜の花弁が一枚残ってたけど私が気が付かなかったから
 それっきり。

 声だけでも聴きたいよ」



思わず呟いた私に、
一花先輩と司はお互いの顔を見合わせた。



「ねぇ、一花。

 今、同じこと思ったよね」

「えぇ、司。

 多分、同じだと思いましてよ」



そう言いだした二人が声を揃えて
私に伝えた言葉は『和鬼君に携帯を持たせなさい』って。

携帯を持たせたら、声が聴きたくなったら、
和鬼君の帰りを待つだけじゃなくて咲も連絡できるでしょ。

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