桜の木の下で-約束編ー
いたずらっ子な笑みを浮かべて組んだタッグ。
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り、
午後の授業が始まる。
午後の授業を受けながらも、
私の意識は和鬼と携帯にばかり集中して
注意力散漫で先生に注意される始末。
授業を終えて放課後の部活に顔を出した私は
何とか練習を終えるものの、
集中力が続いてたとはいいがたかった。
春季大会に向けての練習が始まっていく。
日が落ちてボールが見えづらくなると
練習が終わり、いつものように
コート整備を終えて帰宅準備をする。
「咲、はいっ。
これ使いなよ」
そうやって手渡されたのは、
早々に手配された携帯の端末。
「携帯の端末って高いじゃん」
「高いとか安いとか気にしない。
私と一花が渡したかったの。
名義は兄名義だけどね。
咲が契約するには、
お祖父さまの許可いるでしょ。
それにつけて、私と一花には
便利な兄貴がいるから」
そうやって悪戯な笑みを浮かべた。
司の家の車で一緒に送って貰う車内で
改めて、手渡された携帯電話を覗き込む。
手に持った電話会社の紙袋。
神様を携帯電話で縛るなんて
聞いたことないよ。
ったく、とんでもないこと
言い出すんだから、司も一花先輩も。
でもそうやって、
サラリと言ってくれる二人の存在は
私には頼もしい。
和鬼を神様として意識しているのは
私なんだと、気づかされた瞬間。
和鬼の何もかも全てを知りたいと欲する私。
鬼の世界で和鬼はどんな生活をしてるの?
鬼の世界ってどんなところ?
和鬼には……家族はいるの?
和鬼には……
和鬼には……
和鬼には……
求めだしたらキリがない。
こんにも私の中で
和鬼の存在は大きくなっていくのに私は……
和鬼の事を本当に何も知らない。
悲しいくらいに。