桜の木の下で-約束編ー
「……咲の世界……。
本当に狭いんだね」
クスりと悪戯っ子のように
微笑む和鬼。
「うるさいっ。
どうせ……私の世界は狭いわよ。
狭いけど……
私には大切な世界だよ。
この狭い世界の中で
私は……和鬼を見つけたんだから」
……そう……
この世界が
私に、和鬼と出会わせてくれた
大切な世界なんだから……。
愛しい世界なんだから文句なんて
言うはずないじゃん。
「……咲……。
良い世界だね……」
和鬼は私の瞳から視線を
少し逸らせて小さく呟いた。
とても
寂しそうな瞳で……。
……まただ……。
和鬼と距離を縮めたい。
少しずつ、一歩ずつ、
1ミリずつでも距離を縮めて行きたいのに
和鬼は……いつも寂しそうな瞳をする。
……私が……
私が和鬼にさせてるの?
私が和鬼を苦しめているの?
私はただ……和鬼の傍に居たいと
願っているだけなのに。
そして……和鬼の寂しげな瞳が
1日も早く……心から笑ってくれる
そんな日が来て欲しくて。
その手伝いがしたくて。
私の思いは、望む形で和鬼には届かない。
どうしていいか
……わからないよ。
苦しくて、切なくて……
心が痛くて……
心臓が張り裂けそうで……。
なのに……何も出来ない。
私は和鬼に沢山の宝物を貰ってる。
私には何が出来る?