モテ男とバレンタイン
チョコレートの誘惑
2月14日、金曜日。
放課後に幼なじみの部屋に足を運んだら、ベッドの上がラッピング袋の数々によって占領されていた。
毎年のことなんだけど、今年は特に多い気がする。
「おっ、ちえり来たかー。ほら、ここ座れ」
「……」
部屋の主の一哉(かずや)は、ベッドを背もたれにしてコーヒーを飲んでいた。
あたしに気付いて、ぽんぽんっと自分の隣の絨毯の上を叩く。
そこに歩み寄るのと入れ替わりに、一哉は立ち上がった。
「飲み物淹れてくる。ちえり、何が良い?」
「オレンジジュース」
「ん、分かった。ちょっと待ってろ」
一哉は自分が使っていたマグカップを持つと、部屋を出ていった。
ドタドタを階段を降りる音が響いてくる。
……それにしても、すごい量だなぁ。
半ば感心しながら、ベッドの上を見つめる。
さっきまで一哉が座っていた場所の隣に腰を下ろせば、甘ったるい匂いが鼻に香った。
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