モテ男とバレンタイン
「ちょっと、諦めるの早すぎー! 去年はもっと食べてたじゃん」
「俺の甘いもの嫌いは日に日に悪化してんだよ。つうわけで、あとはちえりが好きなだけ食って良いぜ」
突如押し付けられたチョコレート類の山々。
確かにあたしは一哉と違って、甘いものもチョコレートも好きな方だけどさ……。
さすがにこんなにたくさんは食べきれないでしょ?
そう訴えかけるように一哉を見上げるけど、完全に無視してコーヒーばかり飲んでいる。
口の中に残った甘さが、相当心地悪いらしい。
さすが、コーヒーはブラック派なだけある。
「……しょうがないな~。食べられる分だけだよ?」
「おう、頼む」
とりあえず、持っていた紙袋の中からチョコレートを取り出す。トリュフだった。
当たり前だけど甘くて、とても美味しい。
形がとても綺麗なトリュフだった。
きっと几帳面で器用な子が作ったに違いない。