林檎姫は恋をした。
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とある日の朝、城には見かけない青年が立っていた。
『……………クロが殺されたことは知ってる?』
奥様がその青年に話しかけた。
「はい。それは聞きました。
けれど、殺されたのですか本当に」
『そうじゃなければ自殺になってしまうわ』
「はい、そうなってしまいますね」
『けれどあなたを呼んでよかったわ。
自分であの子を殺しに行かなくて済むんだもの』
奥様は不気味に微笑む。
「はい。兄の敵は必ず」
青年は静かにそう呟いた。