ちっぽけな奇跡のはなし
巴菜が走ってきたのが見えたのか、
カレは優しく微笑んだ。
「来ちゃった」
「な、なんで!?」
「ずっと、会えてなかったから」
カレは優しく、でも強くそう言った。
「待っていようか迷ったんだよね。
こんなことしても、
気持ち悪いとか思われるかもしれないしさ。
でも、迎えに行くことにしたんだ。
過去の自分は待っていただけだった。
同じような結果には意地でもしたくなかったんだ」
かっこ悪いよね、とカレが呟いた。