ちっぽけな奇跡のはなし
「じゃあ、行こうか」
カレは2人分のお金を払ってくれた。
「あの、悪いですよ!
わたし払います!」
隣を歩くカレに訴えたが、
カレは受け取ってくれなかった。
「そんなの気にしないでいいんだよ。
彼女に払わせるなんて、無粋なことはしたくないんだ」
「か、彼女」
巴菜が隣で赤くなっているのに、気付くと
カレは笑って足を止めた。
「本当にキミは」
頭をぽんぽんと撫でると、
「手、繋ぐ?」
そう言って、またわたしを笑わせた。
「繋ぎません!」
でも、本当はあの時
少し繋いでみたかったんだ。
わたしの強がりに気付いたのか、
気付いてないのか、
はたまた気づかないふりをしたのか
分からないけど
カレは優しく笑うだけだった。