ちっぽけな奇跡のはなし



「なんで言ってくれなかったの?
言ってくれてたら、見送りにも行ったし
住所だって知ってたら」



「お前に言いたくなかったんだよ」


聡太は真っ直ぐな瞳で巴菜を見つめた。



「さよならだって思いたくなかった。


小学生なりに考えて、
別れの挨拶をしなければさよならじゃないんじゃないかって思ったから」


「馬鹿だなあ。
さよならだって思わないよ。

電話番号教えてくれてたら、電話したし
住所教えてくれてたら、遊びに来たし

ずっと繋がっていたよ、きっと」






波の音が静かに鳴り響く。


「聡太ー!誰と話してんのー!」


遠くで女の子がこちらに叫んでいた。


「ごめん!すぐ行くからー!」


聡太がその子に向かって叫び返した。




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