ちっぽけな奇跡のはなし




「涙拭きなよ。ハンカチ持ってないから
これで許して」



「わたし、涙なんて出てないよ」


しかし自分の頬に手をあてると、濡れていた。



「キミにとって、彼は大事な人だったんだね。昔からずっと。

無理しないでいいんだ。
泣きたいときは泣けばいい」



カレにそう言われると、
奥から何かがこみ上げてくるように
目に涙が溢れてきた。


遂には子供のように嗚咽を漏らしながら泣いてしまった。



その間、カレはずっと抱きしめてくれていた。


「大丈夫、キミには僕がいる」


そう言ってくれた。







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