おくすりのじかん
中庭には車いすの患者や
お散歩を楽しむ入院患者が数人いた。


ベンチに腰かけた正也の隣に座った。


「せっかく休みなのに朝から悪いな
驚いただろ?」

「うん いつから?」


正也はスマホに視線を落として

「告知されたのは二か月前……進行性の胃がんって
それもいきなりの余命宣告……俺が知ったのは
先月の研修の少し前……」

「もしかしたら研修の日
それを私に言おうとしてたの?」

「抱えてんの辛くてさ 祥子に助けてもらいたいって
思ったんだけどさ……だけど…言ったところでとか
思ってるうちに成り行きで四人で飲むことになったから」


あの腹の立つ飲み会は
本当はこういう趣旨の時間だったんだ。

「ちゃんと知らせてくれたらよかったのに
支えることはできなくても
一緒に抱えることはできるよ。
私にとってももう一人のお父さんなんだから」

「そう言ってくれると思ったけどさ……
でもいたずらに心配させるのもなって…」

正也は悲しそうに笑った。
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