おくすりのじかん
昔 私が殺してしまったと思っていたあの子犬は
何と 公園横の大邸宅の飼い犬になっていたとは


「おかあさん 何にも言ってなかったよ
ひどい ひどい ずっとずっとトラウマだったんだよ」


「言ってなかった?」

母親ってそう言うとこある人……


「ほら 私あそこの家に 配達行ってたから
よく奥さんとは話したりしてたのよ」


まったくお気楽なものだった。
私がどんなに心を痛めたか………


「あの犬 幸せだったんだ~よかった~
でもよく あんなお金持ちの家 雑種の犬なんか
飼ってくれたよね~絶対いても 血統書付かなって~」


「小さいボクちゃんが 欲しいって騒いだのよ~
窓からおばちゃん その犬 ボク欲しいって~
だから連れていってみたってわけ」


「ウチみたいに絶対ダメっていう親だったら
飼ってもらえなかったね~」


「ボクちゃん体弱くてね。
あんまり学校とかも行けてなくて
あの犬は兄弟みたいに 可愛がられたみたいよ」


「よかった~」
心の奥底の後悔の鎖が外れた気がした。


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