おくすりのじかん
なるべくその話には触れないようにしていた。

「そろそろ帰るわ」

私が玄関に向かって歩き出すと

「覚悟だけ……しててね……」

母親の声が追ってきた。


「うん………」


「四人であんたと正也の結婚式
見届けるはずだったのにね……」


「正也は早いかもしれないけど
私はいかないかもしれないよ……
おかあさんたちは期待しないでおいて」


「何言ってんの~
あんたと正也が結婚するんだって」


「は?」

驚いて振り返った。


「あれ?言ってたなかった?
いいなずけだから あんたたち」


また衝撃の事実


「聞いてないし~何言ってんだか~」


「私たちはそうなるって信じてたんだけど
もちろん正也パパも
『あいつらの結婚式見てないからまだまだ
頑張る』って言ってたわ」

声を詰まらせた。


「子供の知らんとこで……何を言ってんだか」

正也にはもう 彼女がいるんだよ・・・・・・

揃って見送ってくれた両親を見ながら 正也の気持ちを
思うと涙が出そうになった。
< 108 / 187 >

この作品をシェア

pagetop