おくすりのじかん
「何よ 歯切れ悪いわね」


「祥子………」


「忘れたから」
正也が言葉を発する前にそう言った。


「仕事の話しかしないから」



「ごめん」



「私は何も傷ついてないから
謝らなくていいよ」




「明日 頼むな」


そう言うと正也は電話を切った。



あの夜


久々に親たちと一緒に出掛けた温泉だった。


「あんたも もうすぐ二人のお父さんなんだね」


うちの母親がそう言いながら 正也の背中を叩いていた。


「たまにおかあさんのところでゆっくりできて
よかったでしょ?」



「よくも夫を置いて 長く里帰りできるわよ
心配じゃないのかしらね あの嫁は」

正也のママは ご立腹気味


正也の嫁っていうのは あの茉鈴だけど
あれから できちゃった婚で 二人は結婚した。


二人目の出産のために 実家に早くから戻っているらしく
正也は一人暮らしをしている様子


「怪しいと思ってたのよ
最初だけよ しおらしくしてたの」

姑が二人 茉鈴の悪口で盛り上がる。
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