私立聖星魔法学園
この手に触れればもう二度とこの世界に戻る事はできない・・・




(でも・・・・)






決めたんだ



もう誰も傷つけないって






(だから・・・・・)





あたしは聖夜に向かって一歩踏み出す






「おい!恵!!」




聖夜の一歩手前で止まる






「大助、あんた来なくていいよ」



「は!?何言ってんだよ!」




「大体あんたはホントはこっちに来なくてもいいんだから」




大助の顔は見ず、ただ自分の足元を見て言う





「あたしは行くから・・・だから・・・・・」





もう、二度と会えなくなるけど




もし会えたとしてもあたしのことを赤の他人にしか思わなくなっても




あたしはずっと覚えてるから





(だから・・・・・っ!)





「・・・さよなっ」



「ふざけんなっ!!」




言葉が途中で止まってしまった





理由は一つ





大助が聖夜の手に自分の手を乗せていたから





「だ・・大助!なんで・・・!?」




「なんではこっちだバカやろう!!」




あまりの声の大きさに驚く




下まで聞こえていたのか『静かにしなさーい』と大助ママの声が飛んできた




「お前がなに抱えてるか知んねえし、こいつと同じとこに行く理由も知らねえ」



けどな、とあたしを見て続ける




「だからってなんでお前一人で行くことになるんだよ!俺がお前のためについてきたと思ってんのか?そんなわけねーだろ!!俺は俺のために行くんだよ!!お前に何言われようとも俺の決意は変わんねーぞ!!!」



初めは開いた口が塞がらなかった



しかし数秒して




「・・・・・・ぷっ」



一度笑い出すと止まらない




「あっはははは!大助あんた・・・凄すぎ・・・!ククッ・・・・」




「な・・・!?今の笑うとこじゃねーだろ!!」




「そうなんだけどさぁ・・・・・あはは!ダメだメチャクチャ笑える!」



大助の言葉を聞いてやっとわかった



あたしはただ恐かっただけなんだ



今の生活がなくなることが




でも大助がこんな真剣に考えてるなんて思わなかった




結局はあたしがバカなだけだった



それがわかるとなぜか笑いがこみ上げて仕方がない




「おい!いつまで笑ってんだよ!!」



「ゴメンゴメン。・・・はーっ!よく笑ったなぁ!」





一度深呼吸をする





「つもりあたしはあたしのために。大助は大助のために、お互い自分の思いのために行くってことよね?」




「そういうことだ!」




「じゃあ・・・」





力強く聖夜の手に自分の手を乗せる







「行くかっ!魔法の世界に!!」
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