青空
先輩にどこへ行くのかも、いつ帰国するのかも私は聞かなかった。否、聞けなかったのだ。
連絡先も知らない、友達とも知人とも言えないような曖昧な関係の私は、この距離感を壊してしまうことが恐かった。
口下手で苦手な私が、何か先輩に問いただして私と先輩との間にある“何か”を壊してしまうことが恐かった。
私と先輩の出会いは普通で、他人からすれば何とも感じられないものなんだろうけど、私にとっては特別だった。
田舎者の私に最初に声を掛けてくれたのは先輩だったから。
そうして長いようで短い間での先輩との出来事を思い出し、私は1つ吐息を吐く。
後悔、しているのだ。
あの時、適当な返事しか出来なかったことを。
先輩に質問しなかったことを。
もっときちんと返事をしていれば、これだけお世話になっているのだから、ありがとうございますぐらい言えたはずだ。
あの時、質問していれば、先輩との曖昧な関係が終わりを告げたとしても、自分の中にしっかりと誇れるものが現れたかもしれない。
そして何より、海外へ行く報告の後、私から先輩を避け続けなければ、もっとたくさんのお話が出来たはずなのだ。