~D*A doll~
そして瑞希は龍翔が引き止める間もなく走り去ってしまった。
残るのは俺、龍翔、雷、そして存在感は無いが雅。
「……諷都さん。俺、余計な事言っちゃいました?」
雷は怯えているように俺に聞いて来る。
でも今は雷に気を使えるほど俺は穏やかではない。
「うん、そうだね」
キッパリと言ってやる。
「……マジですみません。今から瑞希さん引き止めてきます!」
「雷、いいよ。勝手にさせとけば。瑞希は龍翔の本意がまだ分かってないみたいだから。」
雷はさらに申し訳なさそうな顔をして「失礼しました……」と、背中を向けて去った。
瑞希だけじゃなくて雷まであの子の事を気にするなんて。
心外だ。
「……はぁ。めんどくさ」
思わずため息。
「…諷都は相変わらず性格が悪いですね」
雅の向かい側のソファーに腰を下ろすとやっと黙り続けていた雅が声を出した。
「はははっ。仕方ないさ。って、龍翔。本当に瑞希はバカだね?龍翔が莉々香ちゃんを手に入れる為にわざと拉致らせようとしてるのに。一時の感情でカッとなっちゃって?周りが見れてないね。考えがまだまだ甘い」
龍翔が今、莉々香ちゃんを引き止めなかったのには理由がある。
ちょーっと莉々香ちゃんに怖い思いをしてもらえば、全てが解決する。
俺らの姫になればもうそんな怖い思いなんてしなくていいからって言えば、自分から望んで姫になるだろう。
そうなれば龍翔は莉々香ちゃんを傍に置いておけることもできるし、莉々香ちゃんも龍翔の傍から離れない。
龍翔の考えることは非道なんだよ。
って、俺は勝手に考えてるんだけど……多分当たってるだろ。
莉々香ちゃんを本当の意味で手に入れることが出来るんだから。
今回も、俺らが倉庫に来るまでの時間稼ぎか何か知らないけど…無理矢理莉々香ちゃんを気絶させたらしいし。