~D*A doll~
「……くっしゅっ!」
そのまま立っているとくしゃみが出てしまった。
服を着ずに仮眠を取ったことで、どうやら風邪を引いたのかもしれない。
するとソファーに腰掛けた龍翔があたしに声をかけてきた。
「………座れよ」
チラリと開いている席を見ると、遼様の隣だけ。
「………いや、だいじょ…けほっけほっ」
遼様の隣だけは嫌で、断ろうとするものの咳が出て上手く言葉が出ない。
止まらない咳を止める為に息を止めて下を向くけど……。
「けほけほっ」
気管が詰まったように咳が止まらない。
待って、待って。
やばい。
目の前がぐらりと揺れた気がした。
そして家に充満していたあのキツイ香水の香り。
「………おい?」
「莉々香ちゃん?」
「ちょっと、大丈夫!?」
ふっと体の力が抜けて地面に膝をついた。
息が、出来ない。
ヒューヒューとなっている声。
_______あぁ、喘息か。
ぼんやりとする意識のなか思った。
あたしは小さいころに喘息を患っていた。
症状は重く、入退院の繰り返し。
でも成長するにつれ症状は軽くなってきたけど………。
風邪をひくとたまに息が出来なくなってしまう。
こうなると薬を飲んでも、病院に行かない限り無理だ。
何で今このタイミングで…。
霞んできた視界で周りを見回そうとしても、フッと一瞬意識が飛ぶ。
「莉々香ちゃん、莉々香ちゃん!」
「おい、車回せ!」
__________そういえば、鼻につくこの香水は……父親が使っていたものと似ていた気がするなと思った。
でもあたしが倒れても、あの人が駆け寄ることなんてない。
目の前が真っ暗になった。
莉々香side*END