~D*A doll~
咲哉side*
通話の切れたスマホを強く握る。
「………くそっ」
まだ何が起こっているのか状況は全く読み込めていないが、連絡帳を開いて冬夜の文字を探した。
………冬夜が必要な事態ってどういうことだよ。
スマホをタップして通話を掛けた。
コール音が鳴る。
………出ないか。
そう思った時。
『………咲哉?』
「………冬夜」
旧友の声が、やっと聞こえた。
『どうした?久しぶりだな』
「あぁ、ちょっと頼みがあって…」
『なんだ?』
「聖龍の、倉庫まで行ってくれないか?」
『は?聖龍って…お前の?』
「俺の元いた場所。今の奴等がお前の力を借りたいらしい」
『はっ。今の代で何とか出来ねーとか、聖龍は落ちこぼれたな』
「雑談は後ででいい。今すぐ行けるか?俺からも頼む」
『………今から?いや、それは………『とーおーやぁーーーーー!あたしの話聞いてんの?』………おい、黙っとけって。『は?良いご身分してるじゃない。あたしより優先する相手って誰よ』黙れって。咲哉からだよ『え、咲哉ってあの?あたし代りたぁいっ!』おい、やめろって、おい!』
…………何なんだ、一体。
会話が筒抜けだぞ。
そう思った時。
『もしもーしっ!』
甘ったるい声が響いた。
……………は?
まさか、と思った。
『あたしサラ……唯華(ゆいか)だけど?』
…………思わず、携帯を落としそうになった。
『聞いてるー?『おい唯華』あ、ちょっと!あたし咲哉くんと今から喋るんだけど!冬夜のくせに、生意気』
ガッという音とともに、冬夜の声が聞こえなくなった。
『……ったく。あたしを舐めてたら次は殺すんだから』
ため息とともに吐き出された物騒な言葉。
『あ、もしもーし?咲哉くんだよねぇ?一度会ったことあるの覚えてるー?』
「あ、はい……」
一度以前、冬夜のclubのオープン前に祝いとして会いに行ったとき、たまたま彼女とも会った。
酷く、身の震えるような美人だった。
"魔女"と呼ばれていて、その名の通り魔性の女。
彼女が願えばどんなことでも周りの男が叶えてしまう。
裏では冬夜が実質の権力を持っているが、その権力の本当の持ち主は彼女だ。
その権力を冬夜が上手いように活用している。