~D*A doll~





ゆっくりと顔を横に向ける。





_____「さくや、くん」







そこには椅子に腰掛けた咲哉くんがいた。






「大丈夫か?」








______あぁ。








これは、夢なのかな。






咲哉くんがあたしの頭をゆっくりと撫でている。








「…… 莉々香、全然食べてなかったのか?栄養不足だって医者が言ってたぞ」






咲哉くんの手が心地いい。





そう言えば最近、忙しくてサプリメントを飲むのを忘れていたなと思った。








「これからはちゃんと食べろよ」






小さい子供に言い聞かせるようにあたしに優しく喋りかける咲哉くん。






夢なら、もう覚めないでほしいな。







じっと咲哉くんを見つめた。








「……どした?」







にっこりと笑う咲夜くんに、かすれる声を出した。








「さくや、くん……。ギュってして……」









夢ならば、どこまでも幸せな夢を見せてください。







願わくば、この夢を永遠に続けてください。









まだ視界がぼんやりと霞んでいて、咲哉くんの表情はよく見えないけれど。








少しして、咲哉くんが身を乗り出したのが分かった。









そっとあたしの背中に手を入れてくれる。









あたしは咲哉くんの首に手を回し、力を込めた。








するとゆっくりと起こされる体。







咲哉くんは自身もベットに腰掛け、そっと後ろから抱きしめるように支えてくれた。









「……これでいいか?」







「咲哉くん……」







また意識がまどろんでくる。






暖かい。









今まで見た夢で一番幸せな夢だな、と思った。










とても心が満たされていた。










「……………さくや、く……」










ギュっと咲哉くんの服を掴んだのを最後に、あたしは暖かな温もりに意識を手放した。

















< 293 / 359 >

この作品をシェア

pagetop