桜田くんの第一ボタン
窓際の前から三番目の自分の席に駆け寄る。
ガサゴソと裁縫道具を取り出すと目の前の椅子が引かれ、桜田くんが横向きに座った。
一瞬びくりと震えながらも、とりあえず席についた。
渡された学ランのボタンつけに没頭しよう。
互いに言葉を発することはなくて、息遣いとわたしが準備する音しか聞こえない。
遠くの廊下での足音がここまで届きそう。
「清水」
「は、はい」
「なんで敬語?」
あなたの顔が綺麗だからです。
……そしてなんだか雰囲気が恐いから。
「人見知り、なんです」
嘘でも本当でもある理由を口にした。
桜田くんは、目が真っ直ぐすぎて、ちょっと苦手かもしれない。
「ふーん」