桜田くんの第一ボタン
サクラ、降ル。
ポツポツと花びらに雨粒が乗り、滑り落ちるように降っている。
静かに、だけど桜はきっと雨と一緒に落ちてしまうんだろうな。
それもひどく呆気なく。
まだ誰も登校していないような早朝は少し寒い。
雨の日だけはバス通学のわたし。
その時間の関係で早いから、きっと生徒の中では一番乗り。
傘から水をふるふると落とし、下足室から窓越しに中庭を見た。
雫の重みに耐えかねて花びらが一枚また一枚と木から離れていく。
その様子は毎年のように見ているけれど、やっぱりさみしさを孕んでいる。
この時期の雨は少し恨めしいや。
目を静かに逸らして、わたしは止めていた足を再び動かし始めた。