桜田くんの第一ボタン
「もう一月だねー。入試、来月じゃん」
いやだなぁ、と項垂れる。
時間が流れるのが早すぎるよ。
「咲良は桜野を受けるんだっけ?」
「うん、大きな桜の木があったから」
「あたしは家に近いから宮坂にしたけど、あんたの決め方ってそうそうないんじゃない?」
そうかなぁ。
中庭にあった桜の木がとても素敵だったから、桜が好きな人だったらわたしと同じ理由の人もいると思うんだけど。
「宮坂高校かぁ……桜田くんと同じだね」
わたしもそこにすればよかったかな。
誰かが行くから、なんて決め方はよく思われないと知っていても少し考えてしまう。
でもやっぱり、無理だよ。
宮坂高校はギリギリでも進学校だから、わたしの学力じゃ受かるかわからなくて恐かったの。
近くにあるとはいえ、急な坂もあることだし。
桜田くんが行くなんて知らなかったのもあって、安全圏にしちゃったんだ。