桜田くんの第一ボタン
サクラ、散ル。
「つっかれたー!」
隣でぐーっと伸びをする川崎くん。
言葉の通り、顔には少し疲れが出ている。
「今回の委員会、大変だったもんね」
去年も図書委員だったわたしたちはそれなりに慣れているけど、今年度になって初めての委員会だったせいで少しバタついていた。
年度の変わり目ってこんなものだから仕方がないけど。
時間にすると短かったのに、わたしも少し疲れたかも。
ふたりで並んでおしゃべりしながら、会議室のあった別棟から自分たちの校舎に向かって歩く。
その際に通る中庭。
早足で通り過ぎたいけど、ぐっと我慢して普通の速度で歩いていたのに、川崎くんはふっと足を止めた。
置いて行くわけにもいかず、わたしも渋々立ち止まる。
川崎くんは桜に目をやり、そして突然なんの躊躇もなく近づいて行く。
ジャリジャリと木のそばにだけある土を踏みしめる彼。
そっちは汚れるから、とでも言うようにわたしは逆に距離をとる。
いつも通り、一番遠いベンチのそばでその光景を見ていた。