桜田くんの第一ボタン




門の前、体育館、中庭……どこを探しても見つからない。



せっかく出した勇気がどんどん萎んでなくなってしまう。

一応、とローファーを履き替えて校舎内を歩くけど、桜田くんは帰ってしまったのかもしれないな。



そう思うと気分はズン、と重くなる。

ペタペタとやる気のないわたしの上履きの音だけがしていた。



諦めて帰ろうかと思った時、ふと目に入った自分の教室。



……どうせ最後なんだし、教室を覗いてから帰ろう。



一年間。

一年間だよ。

初めて恋をしてからとても長いようで……短い時間だった。



ただ、これだけは言える。





わたしは君を想ってこの一年間、毎日ここに通っていました。






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