桜田くんの第一ボタン
ガラッと音をたてて開けた扉の先には、驚いた様子の桜田くん。
ふたりして目を見開いて、見合う。
ここにいたんだね、とわたしは彼に聞こえないほど小さい声で呟いた。
「清水……?」
桜田くんに名前を呼ばれて、続けざまに「どうした」と尋ねられる。
もう彼は見つからないと思っていたから、会えたことで体が熱い。
なのに寒い時みたいに震える指先。
ぎゅうっと閉じて、無理やり固まった足を一歩前に踏み出すの。
「桜田くんを、探していたんだ」
ずっと見ていた。
ずっと想っていた。
だけど目を逸らしてばかりだった。
今日は、君のことももっと見ていたい。
記憶に刻みこみたいの。