桜田くんの第一ボタン
いつもと違って逸さず見つめるわたしに彼は気づいたのかな。
それでも、ぼーっと表情の読めない顔つきでこっちを見てくる。
まるで桜田くんに恋をしたあの日のようだと思った。
あの日と同じ教室。
あの日と同じ人。
あの日と同じ、想い──。
「桜田くん、あのね」
わたしは、
「ボタンを下さい」
きみがすき。
──これがわたしにとっての告白。
今できる精一杯。
言えない五文字の代わりに告げたのは、決めていたわたしなりの『好き』だった。
表情はさして変わらないのに、ただただ頬を赤く染めて。
桜田くんがいつもと違うみたいだなぁ、と思った。