桜田くんの第一ボタン
──一年前、入学式の日に、友だちの木下 千果(きのした ちか)ちゃんから電話がかかってきた。
千果ちゃんとは、小・中は同じだったけど高校は他校になって、彼女は桜田くんと同じ宮坂高校に通い始めたんだ。
多くの人が帰宅したり、校門前に集まる中、わたしは桜を見ようと中庭に来ていた。
学校見学の時に少し見たのと変わらず立派で、とても綺麗だった。
そっと幹に触れながら、電話をとった。
「もしもし」という言葉は遮られるように、開口一番告げられた言葉にわたしは息を止めた。
『桜田ってば今日が入学式だったのに、もう告白されてLINEまで訊かれてたよー。
彼女大変だね。ちゃんと連絡とってるの?』
なんのことだろう、とぼんやり思った。
わたしが彼の恋人だなんて、そんなわけない。