桜田くんの第一ボタン
相槌を打ちながら話を聞いて、落ち着いたところで電話を切った。
特別な宝物を無くしたような喪失感に、胸だけでなく全身が押しつぶされそう。
君を想って、苦しくてたまらなかった。
千果ちゃんと話しながら、どれだけわたしと桜田くんの関係が脆いものだったのか気づかされてしまった。
LINEどころかメアドも知らない。
連絡も全くとっていない。
わたしたちの間には、ボタンがひとつ転がっているだけ。
なんて心もとないの。
ぽたり、と零れた涙が地面に染みていく。
唇を噛み締めると、そのまま続けざまにふたつみっつ。
ほたほたと落ちていくのに拭えやしない。
声を殺すように、必死で口元を押さえた。