桜田くんの第一ボタン
サクラ、咲ケ。
「約束だったよな。
桜の季節が終わるまで待ってって」
「うん……」
「告白の返事、聞かせてくれる?」
わたしは、川崎くんと仲がいい。
口数の多くはないわたしだけど、彼とは一年生の頃からよく話すし、委員会が同じなだけあって一緒にいることも多い。
だから、よく勘違いされるの。
────わたしと川崎くんが付き合っているんじゃないか、って。
勘違いされても、ふたりして放っておけばいいよねと言い合う程度には、わたしも彼に好意を抱いていたから。
だからあの日、今年の入学式の日に告白されて恥ずかしかったけど、同時にとても嬉しかった。
川崎くんは明るい。
面白い。
……暖かい。
わたし、彼が素敵な人だなんて知っているよ。
だけど、
「ごめん、なさい……っ」
桜田くんじゃないから。